工芸のウチ.ソト

山本忠臣 - ギャラリーやまほん

ソト ギャラリーやまほん案内状

あらためて振り返ってみると2つのギャラリーでの展覧会もかれこれ170回ほどを数える。我ながらに大変な回数だと驚くが、同時に展覧会の案内状も同じ回数だけ制作してきたことになる。今もこの一枚の案内状に様々な思いを託し、お客様に届くようにと願いを込めて作っている。だからなのか私はこの案内状をDMと呼ばない。

ソト 辻徹の写真

氏の写真を初めて目にした時、余白のようなものに引き込まれた。
海の風景の写真なので余白とは少しおかしな言い方だが、それは私の心をも映し出すかのようだった。
しばらくしてその余白は作為を感じさせることのない器と同じ魅力だと気がついた。私が工芸に求めているものを改めて教えてくれた気がした。

ウチ 茶盌 植松永次

工芸という言葉がまだない頃、これらのモノは道具と呼ばれていた。花入も掛け軸も御道具でした。それは特別な代物を指す言葉で雑器などは道具とは言われてはなかっただろう。時代共に言葉もまた変化するが、ツール(tool)=道具となった今でも日本人は仕事道具や台所道具、裁縫道具など特別な物として大切に使う精神があり、現代の生活工芸にもしっかりと受け継がれている。

ウチ 工芸のかたち

食器の実用よりもむしろ鑑賞の対象として器に惹かれてきた。開廊以来、工芸家が表現する作品(器以外)の発表を慎重ながらも積極的に行ってきた。工芸家の器の魅力は器から離れても成立するのではないだろうかといった好奇心だった。私が好む工芸家のオブジェには派手さがなく、どちらかというと地味であるが、工芸の技術を持ち合わせ、生活に色を与え、自然の呼吸と同じような速度で深い世界と繋がるような気持ちになる。それは鑑賞として器を見るのと同じ一つの工芸のカタチだと思う。

- 金森正起 オブジェ

- 三谷龍二 オブジェ

- 梶なな子 オブジェ

- 安永正臣 オブジェ


山本忠臣 - ギャラリスト・建築家

1974年 三重県伊賀市生まれ。2000年伊賀市に工芸作家の発表の場として「gallery yamahon」を開廊する。
2011年には若手工芸家の発表場として京都に「うつわ京都やまほん」を開廊する。
物と時間の関係性を考え、商業施設や住宅などの建築設計を行う「やまほん設計室」を主催する。